設計者による物件調査

築古物件を再活用する時に不可欠な資料とは?

築古物件を再活用する時に不可欠な資料とは、何でしょうか?
売買仲介を数多く手掛けている不動産業者の担当者でも、残存している資料で何が重要か?理解している人はまれだと思います。見積図、竣工図、建築意匠図、設備図、構造図、構造計算書、確認申請図等々、建築を作る際に設計行為の中で作られる資料及び図面は数多くあり、いつ描かれるかによって呼び方が違います。例えば、見積図、契約図、確認申請図、竣工図はその目的と描かれる時期が違います。

◯見積図:施工会社が見積をする際に提供される図面→完成時と違う場合あり。
◯契約図:施工請負契約で決定した見積に対応した図面
◯確認申請図:確認申請における図面(承認済の図面は通例印が押されている)
 確認申請後変更点があれば、「軽微な変更」もしくは「計画変更」により修正されています
◯竣工図:建物完成引き渡し(竣工)時の図面

この中で、建物の認可の詳細が分かる「確認申請図」と建物の完成時の状態が示された「竣工図」が重要です。「確認申請図」と「竣工図」は図面の総体の呼び名であり、様々な図面があり、一部は重複しています。確認申請図は確認申請書類とともに、法律で定められた事項を示し、規模用途により多少違いますが、必要な図面の種類はほぼ同じです。竣工図は、設計者の図面も含め、施工図や施工資料も含みますが、どこまでの資料を含めるかは、設計者や施工者の判断によります。築古物件を再活用する時に不可欠な資料としては、あればあるほど良いわけですが、主な図面・資料は以下のようなものです。

<台帳記載事項証明書>

築古物件の再活用する場合、その建物が確認申請証や検査済証を受領しているかどうかは重要な情報です。台帳記載事項証明書は、役所の建築指導課等の誰でも取得可能です。これにより確認申請証及び検査済証が分かります。これ以外に、「建築概要書」も詳細な建築データや配置図もあり、より詳しい情報が掲載してあり、同様に役所の建築指導課等で取得可能ですが、残念ながら自治体によっては古い情報は破棄されている場合もあります。これらの記載情報と現況の情報に相違点の有無は第一のチェック事項です

<各種申請書類 確認申請証・確認申請書類>

最近のフォーマットはほぼ統一されていますが、30年40年前は自治体によって様々です。確認申請時の申請書類になります。書類と図面がありますが、書類には建築主や設計者、施工者の情報や建物のボリューム、様々な情報を得ることが可能です。建築の申請には、一定規模以上になると、「中間検査」、竣工時の「完了検査」それぞれに申請資料があります。また条例により、中高層建築の届出、景観条例届出、緑化等々や、消防設備設置の届出等様々あります。

<建築図>

建築図は多岐にわたり、特記、仕上表、求積表求積図、配置図、平面図、屋根伏図、立面図、断面図、矩計図、天井伏図、展開図、建具図、階段図他各種詳細図、雑詳細図等々様々な種類があります。その中で重要なのは以下の図面です。
◯仕上表:内外の仕上材や使用部材、商品名
◯配置図:敷地内の建物の配置
◯平面図:各階の平面の内容
◯立面図:建物の立面、窓の配置等、開口面積、排煙換気面積、消防有窓無窓
◯断面図:断面情報、階高、屋根形状
◯矩計図:断面の詳細、構造体と仕上げの作り方
◯建具図:内外あり。外部窓やドアの大きさ、窓ガラスの種類等
◯階段詳細図:階段の作り方、踏面、蹴上の寸法、特に廻り部分が条件を満たしていないことが多い
図面情報はあればあるほど、現状の建物を再認識する上で役に立ちますが、上記の図面は特に重要であり、用途変更時に必要であれば復元する必要な図面もあります。

<構造図>

構造部材リスト
構造伏図

構造図にも、特記、構造部材リスト、杭伏図、地盤補強図、配筋図、軸組図等々、建物の構造となる鉄筋コンクリートや鉄骨、木造の構造材の詳細が描かれています。

<構造計算書>

構造計算書も重要な資料です。用途による積載荷重設定の詳細等、計算の過程が分かります。

これ以外にも、設備図や各種申請図等重要な書類や図面がありますが、現存する資料や図面を整理することにより、万が一現存していない不可欠な図面があれば、他の図面で代用できる場合もあります。それゆえ現存する資料の整理が重要になります。